日本の65歳以上高齢者の比率は1970年に10人に1人未満であったものが、2010年には5人に1人となり、さらに2050年には3人に1人が高齢者であるという超高齢化社会の到来が予想されています。また、高齢化が進む我が国においては、2025年に認知症患者が700万人、2050年には1000万人に達すると推定されてます。高齢化社会における認知症は、とても身近で深刻な病気と言えます。

◎どのような病気ですか。

年を重ねると誰もが「記憶力が落ちた…」とが感じるようになります。これは加齢による生理的な物忘れであって病気ではありません。しかし、年齢に比べて明らかに記憶力の低下が目立つときや、1～2年という短い間に記憶力の低下が進んだ場合、認知症を疑ってみる事が大切です。

代表的な初期症状

・記憶障害…過去の記憶に比べて、数分～数日前の記憶が障害されます。物の置き場所を良く忘れる、同じことを繰り返し話す、日付を間違えるなどの症状が見られます。

・判断力の低下…料理をうまく作れない、家計の管理ができない、道に迷うなどの症状が見られます。

・活動性・性格の変化…趣味をしなくなった、怒りっぽくなった、興味や関心がなくなったなどの変化が見られます。

その他、「物を盗まれた」といった妄想から物を隠したり、身近な人への猜疑心や攻撃性が見られたりする事があります。また、病気が進行すると日常生活全般において介護が必要になります。

◎原因は何でしょうか。

認知症の原因の多くは「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」です。また、脳の病気以外にも、身体疾患によるものなどがあります。中には、原因となる病気を治療することで認知症が改善したり、進行を遅らせることが可能なケースもあり、早期発見・早期治療がとても大切です。

◎どのように診療するのでしょうか。

診断方法

・問診･･･本人あるいは家族に問診を行ないます。

・記憶検査･･･簡単な記憶検査を行い、認知症のスクリーニングをします。

・身体検査･･･認知症の原因になる身体の病気を検索します。

・脳画像検査･･･CTやMRI検査を行い、脳の形態学的な変化を確かめます。

・その他･･･脳波検査など

治療

・アルツハイマー型認知症･･･現段階で完全な治癒は見込めませんが、その進行を遅らせる効果のあるお薬（ｱｾﾁﾙｺﾘﾝｴｽﾃﾗｰｾﾞ阻害薬）を使用したり、様々なリハビリテーションを併用します。

・血管性認知症･･･脳の血管障害を起こしている病気（高血圧、糖尿病など）の治療を行い、悪化を防ぐことを優先します。

・その他･･･認知症に付随して見られる、「うつ症状」「せん妄」「幻覚妄想」などの症状に対して、薬物療法を行なうことがあります。

◎介護保険制度と成年後見制度について

介護保険制度

2000年4月よりスタートした福祉制度です。寝たきりや認知症の高齢者が増える一方で、介護する側も高齢になり、家族だけで介護することが難しい時代となっています。社会全体で介護を支えることを目指し、この制度が生まれました。提供されるサービス内容は、大きく分けて在宅サービスと施設サービスがあります。市町村が窓口です。

成年後見制度

2000年4月よりスタートした制度です。 精神上の障害（認知症、知的障害、精神病など）のため、自己の財産を管理・処分する能力を欠く人に代わって、後見人が法律行為を行なうことで、当人が法律的な不利益を受けることから保護するための制度です。後見人には家庭裁判所で選任される公的後見人と、本人の意思によって選任された任意後見人があります。家庭裁判所が申し立ての窓口です。